明るく、元気でオリジナリティ豊かなキャラクターが人気のタレント、ryuchell(りゅうちぇる)さんが、先日、20023年7月12日に急逝されたニュースに驚きと悲しみが広がりました。
りゅうちぇるさんは、ぺこさんと共に活動し、一躍人気タレントとして幅広い活動をされ、その後、ぺこさんとご結婚、息子さんの誕生、離婚、性的カミングアウト、ジェンダーレスの公表をされました。その後、LGBTQなど性についても発信されていました。
しかし、離婚やカミングアウト後、りゅうちぇるさんへのSNS誹謗中傷が数多く発生します。
この誹謗中傷が自ら命を絶ってしまった大きな原因の一つと言われています。
その誹謗中傷の中には、りゅうちぇるさんの価値観や存在自体の否定や自死を希望するような恐ろしいコメントもたくさんありました。
しかし、彼の死が報じられると同時に彼へのSNSの誹謗中傷もクローズアップされました。それにより、自身が発信したSNS誹謗中傷が非難されることを恐れた人が、これまでのコメントを消しはじめました。分の悪くなった人の中には、アカウント自体を削除する場合もありました。
自身が批判されることには恐れを感じるのに、なぜ、他人を誹謗中傷、批判、傷つけることはできるのか、理不尽でなりません。
誹謗と中傷の違い
誹謗中傷という言葉は「誹謗」と「中傷」の二つの言葉が合わさっています。
それぞれ、人を傷つける言葉ですが、下記のような違いがあります。
誹謗とは
他人を悪くいうこと、相手への悪態、陰口、罵り
中傷とは
根拠のないことで相手を悪く言うこと、確証のないことを言い相手を傷つける
誹謗中傷とは
根拠や確証がないのに相手を悪く言い傷つけること
例えば、おまえはクズだ!マヌケだ!と言うのは悪口であり、誹謗にあたります。そして、根拠や確証がないのにもかかわらず、泥棒だ!浮気をしている!〇〇に違いない!と言うのは中傷になります。
誹謗中傷と批判
また、誹謗中傷に近い言葉として挙げられることが多いのが「批判」ですが、誹謗中傷は根拠のない悪口であるのに対し、批判は物事に検討を加えて評価することや異なる意見のことです。なので、全く根拠のないこと、きちんと確証もないことで相手を悪く言うことは誹謗中傷です。
りゅうちぇるさん家族と実際に会ったことのない人が確証のない憶測で悪口を言うことは誹謗中傷そのものなのです。
誹謗中傷は悪意や虚偽の部分が批判よりも大きいですが、批判や評価の中でも、言ったほうは正当なことを言っている、間違ったことを言っていないと思っていても言われた相手が強く傷ついた場合などは誹謗中傷、名誉毀損とされることもあります。そのため、悪意の有る、無しでの安易な判断は難しいです。
結婚や育児、離婚が関係してエスカレートした中傷
今回、もしも、りゅうちぇるさんに結婚や育児、離婚といった要素が全くなかったとしたら、ここまでSNS誹謗中傷はエスカレートしなかったかもしれません。
通常、離婚や浮気、不倫と言った結婚観に関するネガティブなワードはSNS誹謗中傷の的になりやすいです。それは、誹謗中傷する人が、子供がいるのに奥さんがかわいそうと思ったり、離婚を単純に「悪」と考え、自分が正論、正義を言う。と言うイメージを持ってしまったからかもしれません。
しかし、自分は正論を言っている、自分は間違っていないという主張が、悪口や決めつけ、誹謗中傷、人を傷つけていい理由にはなりません。
そして、匿名、身元がバレなければ何を言ってもいいわけではありません。
ロマンティック・ラブ・イデオロギーの投影
また、お二人はぺこ&りゅうちぇるとして、若く一躍有名になり、二人のラブラブな様子も人気となりました。プロポーズの時には、りゅうちぇるさんが王子様の衣装を着て馬車と共にサプライズ登場したエピソードや結婚後、若いお二人に男児がご誕生したこと等により、ロマンティック・ラブ・イデオロギーを投影した方も多かったと思います。
「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」とは、好きになった相手と結婚し、一生一緒に添いとげる、という考え方です。
結婚は、自分とピッタリの相手と出会い、相思相愛になり、結婚するものだと思っている人は多くいます。結婚する相手は特別でかけがえのない存在で運命の人。結婚は唯一絶対の愛の証だという思いが根付いている人が多いです。
この二人はいつもラブラブで、ロマンティック・ラブ・イデオロギーと思っていたのに、そうではなかった、裏切られたと勝手に感じてしまった人が多くいたことも誹謗中傷を増やしてしまったかもしれません。
勝手な結婚観や決めつけは相手を傷つける
ロマンティック、夢を見ることはいいことなのですが、ロマンティック・ラブ・イデオロギーや理想、自分のふつうを絶対的なこと、揺るぎないことと捉えてしまうと厄介、というお話を少々させていただきます。
例えば、結婚へ向けて交際をしていたのに、急に、自分の思うようにいかないことが起きた、気に入らないことがあった場合に、自分の理想やロマンティック・ラブ・イデオロギーに少しでも反すると感じると、急に嫌になってしまいます。
すると、急に悪口を言い出したり、理由をきちんと言わずに相手を避けたり、音信不通になったりと、大人気ない行動をとる人が少なくありません。無言やシカトも相手を不安にさせ、傷つけます。仕事であれば、全く信用を失う行為です。
ではなぜ、こうなってしまうのかその人たちに理由を聞くと、こんな声がありました。
「ふつう、好きな相手には毎日連絡しますよね?自分をあまり好きじゃないに違いない。もう嫌だ。」
「結婚の話をしているのに、全く楽しそうな表情をしない。楽しそうにするのがふつうじゃないですか?もう、興味がなくなった。」
「私についての話を聞いてこない。きっと、私に興味がないに違いない。腹がたつ。」
「きっと、部屋が汚いに違いない。結婚しても家事を協力しないに違いない。」
これらにはきちんとした確証はありません。妄想や思い込みでの決めつけであり、身近な人への中傷です。
ここで、理想やロマンティック・ラブ・イデオロギーに深く根付いてしまっている人たちの厄介なところは、根拠も確証も事実も確認しないまま、ただ、嫌になってしまうことです。自分の理想から外れたということがとにかく嫌なのです。結婚観への、ふつうはこうだろう、きっと結婚には向いていない、きっと愛情がないかもしれない、きっとそうに違いない、ということは、自分勝手な考えです。
気持ちや思っていることを伝えず、妄想、中傷は、相手にとっては理由がわからず、ただ、不安や心配、つらさを募らせ、傷つけるだけです。悪気の有無にかかわらず、もし、何度も会っていた仲であるなら、相手へ対して失礼で思いやりのない行為でしょう。
もしも、自分以外の人にきちんと思いやりを持って接することができる人であれば、きちんと話し合い、まずは、根拠や事実を尋ねるはずです。
その理由を聞き、理由を受けいれ、自分の希望を言ったり、相手の気持ちや希望を聞いたり、問題点があれば二人で解決策を見つけていきます。
これができなければ、理想や結婚観の押し付け、決めつけ、自分勝手になってしまいます。
自分が「ふつう」「きっと、違いない」と思っていることは、絶対に正しいのでしょうか?それを勝手にいい放つこと、相手の根拠を知りもしないことは価値観、考えや思い込みの決めつけや押し付けに過ぎないのではないでしょうか。
結婚や夫婦のカタチはそれぞれ
結婚する前は、その人が結婚に向いているか自分に合っているかの確証はありません。結婚はスタートです。
その人が、自分や結婚に向いているかどうかは、結婚生活がスタートしてから構築されて行くものです。同じ結婚のカタチはなく、人それぞれ、十人十色、百人百色です。
夫婦や家庭の在り方、それぞれの気持ちも時間と共に変化するものです。絶対変わらないとは言い切れません。
結婚してから、時間と共に、愛情や安心、信頼感が生まれ、積み重なっていきます。例え結婚時は、友人や同僚のような存在とも感じていたご夫婦でも、年月を経て、大きな安心や信頼を構築し、幸せな家庭を築かれてます。これらは急にできるものではありません。
りゅうちぇるさんとぺこさんのように、新しいパートナー、家族のカタチや生き方、自分らしさを選択し、公表されたことはとても勇気のいることだったと思います。
そして、見ず知らずの人から多くの誹謗中傷を受けたことは本当に辛かったと思います。
私は、カミングアウト後のお二人も応援し、これからもっと活躍して欲しいと思っていました。りゅうちぇるさんはどんどん綺麗になっていましたし、以前から、YouTubeでぺこさんはとても歌が上手い、多彩なお二人と思っていました。本当に残念です。
自分で命を絶とうとすることは本当に悲しいです。自死を考える人が思いとどまり、幸せになれますように。そして、誰かが誰かを傷つけること、誹謗中傷がなくなりますように。
※記載の内容はあくまでも一個人としての思いです。特定の人を誹謗中傷、善悪の有無を指しているものではありません。